被災時において事業を継続させるということ
令和6年は元日から能登半島地震が発生し、2024年1月8日現在、まだまだ避難生活を余儀なくされている方が大勢いらっしゃいます。
このたびの災害により被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に 心よりお見舞い申し上げますとともに、 皆様のご安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます.
経営者の方に置かれましては非難生活をしながらも事業の継続について頭を悩ませておられることかと思います。
物流、通信はもちろんのこと食料や水など生きるための最低限のライフラインすらまともに供給がなされない。
このような事が被災地では当たり前のように起こってしまいます。
そのような極限ともいえる状況かにおいて、何も手を打たなければ経営状況はすぐに悪化してしまいます。
せっかく手塩に掛け育ててきた会社があっという間になくなってしまうことすらもあるのです。
そのような状況に陥らないためにも平時から入念かつ周到な準備を行うことで被災によるダメージから速やかに復旧できる体制を構築しておく必要があります。
速やかに被災によるダメージから復旧することの意義
企業は、製品、商品、サービスを提供することでその対価として金銭を得ることができます。
つまり、通常の経営活動それ自体が、「誰かの役に立っている」からこそ対価を得ることができているとも解釈できます。
被災をすることで経営活動が停止してしまうということはそれらを提供することができないということです。
製品、商品、サービスの提供が停止することでだれか困る人がでてくる。
そのような人を少なくするためにも企業には被災から速やかに復旧するという社会的義務があると言えます。
速やかな復旧とは
とは言えども、被災時においてインフラなども断絶している状況では企業も完全に復旧するということは困難としか言いようがありません。
そのために、企業は平時より、災害の度合いによるダメージを想定し、復旧可能なレベルや復旧に要する時間を把握しておく必要があります。
これらの被害想定や復旧のための計画をBCP(=Business Continuity Planning=事業継続計画)といいます。
このBCPがあるか否かで被災からの復旧スピードは大きく変わってきます。
なぜ、計画を立てるだけで復旧スピードが早くなるのでしょうか?
次の項にて説明いたします。
認識しないリスクに備えることはできない!
被災時には様々なリスクが顕在化します。
停電、火災、従業員の不足、道路の分断などほか、為替の変動や貸し倒れなどといった財務リスクも著しく上昇します。
これらのリスクを災害が起こってから対処しては、後手後手に回ってしまいます。
BCPは、これらのリスクを様々な角度から分析し、対応策を立案するためにも使用できます。
つまり、リスクへの対応策を平時の段階から検討し、万全の対策を練ることができるようになります。
従業員が参集できない場合なども想定下に考えることで、被災時における最大生産量なども想定しておけば取引先などとの調整にも活用することが可能となります。
このような様々な対応策が実際に被災した際における迅速な復旧への大きなアドバンテージとなるのです。
BCP策定に関する基本的な考え方
BCPは企業が自然災害などの危機的状況を乗り越えるために必要案ものです。
策定するにあたっては以下のポイントを押さえた上で策定しましょう
従業員・家族を守るものである
事業を復旧するに当たって従業員の力は必要不可欠です。
BCPは事業を継続するための計画ですが、その作成に当たって第一に考えなければならないことが「従業員」や「その家族」を守るということです。
「従業員」や「その家族」を守るということは災害から生き残ってもらうということです。
従業員が安心して事業の復旧に当たれるような防災計画を策定する必要があります。
優先順位の設定
緊急時においては、優先順位を明確にすることが重要です。
復旧させる事業の優先はもちろんですが、すべての復旧が困難であると判断した場合は一時的に切り捨てることも重要です。
災害時においては、ただでさえリソースが不足してしまいます。
そのような中で復旧が困難な事業や設備の復旧にまでリソースを割いてしまうことで重要な事業の復旧が遅延してしまいます。
重要な事業の復旧の遅延が経営に致命的なダメージを与えてしまうことにも繋がりかねません。
優先順位を明確にするとともに、時には「切り捨てる」選択も辞さない計画を策定する必要があります。
つまり、
①中断させない事業
②速やかに普及させる事業
③落ち着くまで復旧させない事業
といった三段構えによる復旧策を策定することでより実効性のある継続計画を策定することが可能となります。
最初から完璧を目指してはいけない
BCP(事業継続計画)は災害からの復旧です。
防災という普段の業務とはまったく畑違いのことを行うということは非常にハードルが高く感じてしまいます。
そのため、難しく感じてしまい、「なかなか手を付けづらい」と感じている経営者も多いようです。
BCPは「策定」しただけでは効果を得ることはできません。
その計画にできるだけ沿った行動ができるよう「訓練」する必要があります。
つまり、完璧な計画を策定したと仮定しても、「訓練」できていなければそれは絵に描いた餅になってしまうということです。
そのような性質を持つものですから、最初から完璧を目指すわけではなく、「訓練」をすることでブラッシュアップしていく気持ちでシンプルなBCPを策定することをお勧めいたします。
最初から完璧なものを作るとなると準備も大がかりになり、なかなか着手しにくいこともあります。
スモールスタートにより、「着手」⇒「策定」⇒「訓練」⇒「改定」を繰り返すことで、より自社にあったBCPを策定する方が、効果的な計画になります。
さいごに
明確な判断基準がない中で被災してしまうと、その場の対応に追われ場当たり的な対応になってしまいがちです。
災害地への支援を行っている自衛隊も、明確な訓練基準を設け、普段から繰り返し訓練を行うことでチームとしての練度を高めています。
その能力を災害派遣に応用しているのです。
つまり自衛隊だから特別に対応しているわけではなく、対応できる組織になるために訓練を行っているといえます。(もちろん、設備の導入などは防衛予算が使われていますが。)
企業も被災時に事業を継続するのための体制を構築することは難しいことではありません。
今回の災害を気に、ぜひ自社の防災体制というものにスポットを当ててみてはいかがでしょうか。