405事業を成功させるために必要な3つのこと
新型コロナウイルス感染症により損害を受けた事業所に向けた融資(通称:ゼロゼロ融資)の返済が始まって1年以上が経過しました。
当初の予想と同様、返済が始まることで借入企業への負担が増大し、最悪の場合廃業に至るというケースが増加してきています。
廃業には至らなくても、金融機関に対し引き続き返済の猶予を迫る企業も同様に増加してきており、中小企業の資金繰りが難化してきていることが大きな問題となってきています。
【405事業の概要については、↓をご参照ください。】
金融機関としては返済猶予などを行う場合においても、しっかりと状況が改善されることを明示することが重要です。
その中の一つと手段として、経営改善計画策定事業(通称:405事業)により、金融機関に対し返済猶予の同意を得る場合があります。
405事業とは、企業が経営改善計画の策定を行うに当たり、企業を支援する専門家に対する費用を国が補助する制度であり、金融支援を伴う中小企業において資金の負担軽減などの観点からは非常に有効な制度であると言えます。
その反面、405事業を行っても改善が成功しないパターンも一定存在します。
専門家が介入し、しっかりとした計画の策定を行っているはずでありながら改善が成功しないのでしょうか?
それは、成功のために必要なポイントを押さえていことが原因です。
今回は、405事業成功のためのポイントについてお話させていただきます。
必要なこと その1 絵に描いた餅の計画を作らない
金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者を対象として、国が認定した税理士などの専門家である認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取組みを促すものです。
つまり、しっかりと事業の状況を分析し、改善のための計画を策定する事業であると言えます。
その計画において、事業の分析が中途半端であったり、しっかりと経営資源を活用した地に足のついたアクションプランに基づいた計画の作成ができていない場合、405事業による経営改善は失敗確率が増えます。
金融機関としても数多くの計画書を見てきている立場であることから、そのような計画(バラ色計画なんっていったりしますが)はすぐに見抜いてしまいます。
しっかりと事業の分析を行い、事業所が結果のだせる計画の作成が必要です。
必要なこと その2 専門家任せにしない
405事業は、専門家が経営改善計画の策定を支援する事業です。
専門家の知見を活用するにはもってこいの事業であると言えますが、反面、専門家に任せっきりとなる事例も頻出しています。
これは、事業所にも悪いところはあると思いますが、専門家にも問題があると言えます。
計画は策定だけではなく、その実行が求められる。
それを踏まえた上で、計画策定の支援を行っていれば事業所にも計画策定に参画していただく必要があることは百も承知の話であると言えます。
計画策定の時点でそれを理解していない専門家は、事業所への説明も拙く、理解してもらおうという姿勢で事業を遂行しない傾向にあります。
しかし、事業所に改善計画にしっかりと納得をした上で実行にあたらなければ計画の成功は見えてきません。
事業所も専門家もしっかりとそれを理解した上で計画を策定する必要はあります。
事業所と専門家が二人三脚で、実行可能な計画策定を模索していくことが重要です。
必要なこと その3 リスケが最終目的ではないことを理解する。
前述のとおり、405事業の実施により金融機関より返済猶予などの条件変更(=リスケ)を受けることが可能となります。
経営者として、ひとまず安心するところだとは思いますが、この時点で経営改善はまだ始まったばかりです。
これから、業績を回復させるための計画の実行が求められます。
計画の策定以上に重要なものが計画の実行です。
しっかりとした計画の実行により、業績を回復させなければせっかくの405事業も水の泡となってしまいます。
なお、経過を観察するために、モニタリングの実施が行われますがここでしっかりと改善状況を示すことが最終的な目標であると言えます。
(モニタリング実施時において、専門家(=認定経営革新等支援機関)はモニタリング報告書を中小企業活性化協議会に提出することになります。)
さいごに 405事業による効果
405事業は、自社の経営戦略の見直しや営業活動の方策、損益計画の策定などを通して、自社の強みを再認識し経営を改善していく事業であると言えます。
中小企業においては、自社の強みを自身では気づいていないなどといったパターンが意外と多く存在します。
自社ではなかなか気づけない強みや機会を専門家を活用することで可視化し、それを新たに磨き上げていくことで経営改善を実現していく。
それが405事業の醍醐味であり、最大の効果であると私は思います。
今後も事業所を取り巻く環境は決して易しい環境であるとはいいがたい、非常に不確実性の高い状況であると言えます。
そのような時代だからこそ、地に足のついた計画書を策定し、経営の改善実行を行っていきたいものですね。