中小企業における企業価値評価とデューデリジェンス

M&Aという行為は少し前までは、主に大企業が買収を行う際に使われていた言葉であり、中小企業においてはあまり関係のないものであると思われていました。

しかし、昨今中小企業におけるM&Aが当たり前となってきています。
これに伴い、M&Aの仲介業者の市場も急拡大しているのですが、そのため悪質な仲介業者による強引な営業行為や虚偽に近い広告行為などにより中小企業において被害が拡大しています。

これまでM&Aというものを検討したことがない事業者にとっては仲介業者のいうことの真贋を見極めることは極めて難しく、業界においても大きな問題としてとらえられています。

そこで今回は中小企業における「企業価値評価」や「デューデリジェンス」ということについてお話をしたいと思います。

企業価値評価とは?

企業価値評価とは、特定の企業の会社自体の価値のことを指します。

上場していない企業は、証券市場にその株式が流通していないため、市場における価値を知ることができません。そのため、M&Aなど企業を売買する際や相続などを行う際に株式を譲渡する場合といった状況においては、その適正な価格を算定する必要があります。

この算定する行為、若しくは算定して得た結果を企業価値評価といいます。

企業価値の方法については、以前のブログにおいても説明していますのでそちらを参照ください。

この企業価値の算定については、いくつもの方法があり、その企業の状況等により適した算定方法を選択することが重要です。

中小企業における企業価値評価における課題

オーナーの影響

中小企業は良くも悪くもオーナー兼経営者の影響を大きく受けやすいといった特徴があります。

それは、事務的に算定した価額によっては見えてこない企業の価値では見えてこないものであり、価額に反映しにくいといった特徴を有しています。

しかし、中小企業によっては、オーナーが変わることで売上高が激変するといったことは日常茶飯事ですので注意が必要です。

また、従業員がオーナー兼経営者に依存している場合も多くあることから、譲渡後にモチベーションが著しく低下し、事業に大きな影響を与えることもあります。

M&Aなどにより企業や事業を売買する場合には、譲り渡し企業の経営者と取引先の関係をしっかりと把握した上で、経営者が後退することで取引がなくなることが内容に事前にしっかりとデューデリジェンス(売り手企業の価値、リスクの調査)を実施する必要があります。

シナジー効果の評価

シナジー(相乗)効果とは、M&Aにおいて最も考慮すべき事項の一つであると言えます。

M&Aとは譲り受け企業が買収後に自社の更なる成長を期待するために行うことが一般的であり、既存の事業と関連性のある事業の買収を行えば、弱点の補完ができたり、更なる販路の開拓が可能となるからです。(ただし、関連性のない無関連多角化といった方式により更なる成長を目指す場合ももちろん存在します。)


しかし、企業の価値を上げるため(主に譲り渡し企業が売価を上げたい。)に過大な評価を行うことはM&Aを失敗させる理由となります。

過大評価、実現可能性への過大な期待を行わないよう、しっかりとしたデューデリジェンスを実施することが重要です。

規模の経済の限界

買収会社が同じような業種を展開している場合、思った以上に買収の効果が得られない場合があります。

異なる文化を買収することでより管理が複雑化したり、統制が困難になることで意思決定のスピードが鈍化し、企業全体の管理コストが増大することがあります。

企業が急激に大きくなることは必ずしもメリットばかりではないということを考慮して企業価値を評価しなければなりません。

一般的に規模の経済の評価は、コストの削減や市場の拡大、生産性の向上などを考慮して評価しますが、過大な評価を行わないように、ここでもしっかりとデューデリジェンスを実施する必要があります。

中小企業のM&Aにおけるデューデリジェンス不要論

中小企業のM&Aにおいて、細やかなデューデリジェンスは不要であるといった意見もあります。

それについてすべてを否定するわけではありませんが、一定のデューデリジェンスは必要であると私は思っています。
デューデリジェンスが甘く行われれば結果として前述のような不利益を被ってしまうこともあり、以後の統合活動に大きな支障をきたすこととなるからです。

企業規模や売買の目的などに応じて適時適切なデューデリジェンスの実施を行うことが望ましいと言えます。

適時適切なデューデリジェンスをベースに企業価値を算定することで、売り手にとっても買い手にとっても望ましい結果が得られるのではないでしょうか?

さいごに

M&Aが一般的になっていくことは企業が新陳代謝を行っていく上では非常に重要な事です。

しかし、その反面専門的な知識が必要となることが多いことからそれを利用した仲介業者の悪質な営業手法などが横行する温床となってしまうことも否定できません。

細かい企業価値の評価を全経営者が知る必要はありませんが、どのような理由でその価額が算定されているかを知ることは、M&Aを成功に導くために非常に重要な事であると言えます。

企業価値のあらましについて、しっかり専門家から説明を受ける体制をつくることが大勢ですね。

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