賃上げの現状と2026年の見込

1 賃上げの現状

ここ数年の日本は、賃上げが「一部の優良企業だけのイベント」から「経済全体の課題」へと昇格しました。

象徴的なものが春闘の結果です。

厚労省の整理では、連合の2025年春闘(最終集計)で賃上げ率は全体5.25%、中小は4.65%と、比較可能な2013年以降で最も高い水準とされています。

物価が上がる局面では、名目賃金が伸びても生活実感が追いつかないことが多いのですが、それでも「賃上げが当たり前」という期待形成が進んだ点は大きいでしょう。しかしまだまだ物価上昇に対応できるだけの賃上げができている企業は一部であり、特に中小企業の賃上げは引き続き、大きな課題となっていくことが予想されます。

そしてもう一つの潮流が最低賃金です。

2025年度の地域別最低賃金改定は全国加重平均で1,121円(前年差+66円)とされ、全都道府県で1,000円超になりました。

これは非正規・未組織労働者にも波及しやすく、賃上げの裾野を広げる「床上げ装置」として機能しています。

反面、パート従業員などは社会保険における扶養の範囲内での働き方を求めている従業員も多く存在することから国の思惑とは一部のずれが生じている結果となっているのではないでしょうか?

2 中小企業における賃上げの影響

中小企業にとって賃上げは、景気のニュースというより「経営の物理法則」であると言えます。

売上が同じでも人件費が上がれば利益は縮み、放置すれば投資・採用・事業承継にまで影響し、結果組織は連鎖的に弱ることとなります。

それを回避する策は、次の2つです。

①価格転嫁(取引適正化)

②生産性向上(省力化・DX・人材育成)


以上2点の同時達成が組織の強化、成長力を養うこととなります。

政府もこの点を正面から掲げており、石破内閣の政策ページでは中小企業・小規模事業者の賃上げを進めるため、価格転嫁・取引適正化、生産性向上、事業承継・M&A、人材育成などを柱にした「賃金向上推進5か年計画」を進めるとしています。

これらの影響は二面性があります。プラス面は、人手不足下での採用力・定着率の改善、技能蓄積による品質向上です。マイナス面は、原資が確保できない企業ほど「賃上げ→利益圧迫→投資できない→生産性が上がらない」という負のループに入りやすいこと。

ここで最低賃金の上昇が加わると、特に労働集約型(飲食、介護、運輸、建設周辺など)ではインパクトが大きくなります。
負の循環から脱却するには相応の労力が必要となることから、しっかりとした計画の策定と実行力が必要となってきます。

3 2026年における賃上げ政策の見込

2026年は「賃上げを続けろ」という号令だけでは回らず、制度の組み替えが焦点なることが予想されます。

まず最低賃金は、政府として「2020年代に全国平均1,500円」という高い目標に向けた取り組みを掲げています。



2025年度改定が全国加重平均1,121円まで来たので、目標との距離はまだありますが、「上げる前提」で政策が設計されている点が重要であると言えます。
また、上げるための原資の確保については引き続き、自助努力が求められることから早めの対策が必要となってきます。

次に税制面についてです。
中小企業向けの「賃上げ促進税制」は、前年度より給与等支給額を増やした場合に税額控除できる仕組みとして明確に位置づけられています。
しかしその 一方で、2026年度税制改正大綱の概要(財務省資料)では、大企業向け措置を令和8年3月31日で廃止する旨など、賃上げ関連税制の見直しが示されています。

つまり2026年は、支援の重心が「広く薄く」から「中小の実装支援(価格転嫁・省力化投資・人材育成)」へ寄っていく可能性が高い年です。

結局のところ、2026年の賃上げは「気合い」ではなく「仕組み」で決まっていくことが望まれます。

価格転嫁が通り、投資が回り、人が育つ企業ほど賃上げは継続しやすい。
逆に言えば、日本の賃上げの本丸は、賃金そのものというより“稼ぐ力の再設計”であるということです。

賃上げはゴールではなく、経営と政策の成績表――そんな時代に入っていることを証明しているのかもしれません。

賃上げに左右されるのではなく、積極的に人的資本への投資ができる企業への成長が求められる時代となってきています。

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