なぜ新規事業がうまくいかないのか

 国が、新型コロナウイルス感染症の影響から早期に事業を立て直す事業所を補助するために行っている「中小企業等事業再構築促進事業」における目玉政策「事業再構築補助金」

 この補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響により収益を確保し難くなった既存事業におけるビジネスモデルから脱却し、事業を再構築するために必要な設備投資等を補助するための補助金です。

 しかし、現実問題、新規事業を行う場合において、「なかなか思った通りことが進まない」、「うまくいかない」このような状況に陥ることは珍しいことではありません。

 今回は、なぜ新規事業が上手くいかないのか、またどうすれば上手くいくのかについて述べてみたいと思います。

(注:事業再構築補助金では必ず新規の事業を行わなければならないわけではありません。国が定めた事業再構築の分類に応じた対応が必要になります。)

1 顧客ニーズの把握

 色々なものや情報があふれている昨今、目新しいサービスや商品というものを創出することはなかなかハードルが高いことと思います。

 そのような中で「新しい事業」を思いついた場合、すぐにでも世に出したくなる気持ちはわかります。

 しかし、そこで一つ実施してほしいことがあります。それが顧客ニーズの把握です。

 いくら「競合相手がやっていない」事業であってもそこに顧客ニーズが存在していなければ「売れる」サービスや商品とすることはできません。


 顧客ニーズの見極めのために、調査などはしっかりと実施しましょう。

2 迅速な決定・行動

 顧客にニーズのある新規事業というものは、自社だけが狙っているということは少ないと言えます。

 競合他社と比較してスピーディーな展開を心掛けなければ先を越されてしまう恐れが有ります。


 一般的に中小企業はスピーディーな意思決定を強みとしている場合が多いのでこの強みを存分に生かし、迅速な行動を心掛けることで他社よりも優位に新事業を展開することが可能となります。

3 資金不足

 新規事業とは霧の中を運転するようなものです。曖昧で不確実性が高い事業になってしまいます。

 そのため、予定していた資金=予算をオーバーする可能性は通常の業務と比べて高くなります。資金不足の結果、必要な調査ができなかったり経営資源が不足することが新事業失敗の要因となってしまいます。

4 研究・開発力の経験、ノウハウの不足

 新規の事業、プロジェクトというものは頻繁に興る企業というものは少ないと言えます。

 そのため、新しく生み出す作業に慣れているという人は必然的に少なくなってしまいます。

 しかし、新規事業というものはバックヤードも含めあらゆる知識、ノウハウ、技術が必要となってきます。
 その能力等が不足しているためプロジェクト進行上の重大な欠点を見つけることができなかったり、そもそも市場調査などがしっかりと行われておらず、本来参入すべきでない市場へ参入してしまうといったことなども生起してしまいます。

5 撤退の判断

 新規事業が上手くいかなかった場合においては、撤退も大切です。


 事業の撤退というものは非常に難しい判断です。
 しかし、それは同時に大変重要な事項であり、経営者を悩ませる問題であると言えます。

 それまでに投入してきた資金、人的資源(労力)などを惜しんでしまうことで撤退を決めることができないといったことが発生してしまいます。

 このような状況は企業の体力を大きく損ねてしまう結果にしかなりません。
 新規事業へ参入する場合は、しっかりと撤退を行う条件などを決めておけば必要以上の損害を被ることを防ぐことが可能です。

6 新規事業を成功に導くために必要なこと


(1)経営トップの陣頭指揮

 新規事業においては、刻一刻と変化する状況において、意思決定を迅速に行うことが重要です。

 そのためには経営トップ自らが陣頭に立って指揮を執ることや権限、予算をプロジェクトリーダーにしっかりと委譲しておくことにより意思決定のスピードを上げていきましょう。

(2)予算配分に柔軟性を持たせる

 新規の事業では予想外に予算が必要となってくることが多々あります。

 その際に、柔軟かつ迅速に予算が配分できる仕組みを確立しておくことが重要です。

 そのような柔軟な予算編成ができるようにするには経営者や予算権限をもったリーダーの迅速な決定が必要となってきます。
 迅速な意思決定の体制構築に努めたいですね。

(3)他人の力を借りる

 どうしても自社内のみの研究開発では限界があります。

 産学連携といった言葉の通り、自社と学術機関で共同して研究を実施することでデータ等を共有することが可能となります。

 その際には、自社のノウハウが流出しないように注意する必要はありますが、研究開発力がない企業にとっては非常に有効な手段となり得ます。

(4)金融機関との調整はしっかりと

 研究開発の道半ばにおいて資金面で新事業をとん挫させる。

 これほど悔しいこともないと思います。


 投資家などから資金を得るという手ももちろんありますが、中小企業としてはなかなかハードルが高いと思います。
 そのような時はやはり金融機関からの援助をもらうことがスタンダードであると言えます。

 常日頃から事業計画を説明することで、理解を得ることが重要であると言えます。

(5)撤退の基準を設けておく

 数値目標や期限などしっかりと当該事業から撤退するための基準を設けておくことが重要です。

 いわゆる「損切り」というやつですが、これがなかなかできないことが多いです。


 こだわりのある新規事業であればあるほど心情的に撤退することは心苦しいと思いますが、思い切った徹底こそ会社を存続させるために必要なことであるという場合も多くあります。


 しっかりと逃げ道を確保することも経営には重要なことです。




 いかがでしたか?

 新規事業は遂行していくことが困難である反面、企業を躍進させる起爆剤ともなりえるものです。

 しっかりとした計画を策定し、進めていくことで企業を更に一段階上のステージへと導いていきましょう。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です